作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

成功にはコツがある!

 最近、「本の中で本当に自分に必要な箇所は4パーセントにすぎない。だから、その4パーセントが書かれている箇所を見つければ、本を読むスピードは10倍以上速くなる」といった速読法を説く本をよく見かける。
 私も多くの本を読みつつ、月1冊のペースで本を書いているので、この手の速読法には魅力を感じる。たとえば、今年(2008年)の2月には、40冊の本をインプットしつつ新書を一気に書き上げた。インプットとアウトプットを同時に行なって20日強である。
 しかし、「本の中で必要なのは4パーセント」という考え方には、若干抵抗も感じている。私の場合、本は新しい知識、新しい世界への扉を意味する。1冊の本が、400パーセントの可能性をもたらしてくれる、という表現のほうがむしろしっくりくる。読む前から4パーセントと踏むような本には、そもそも食指が動かない。
 私は時々近所の古本屋に行って、「105円コーナー」で10冊くらいまとめ買いをすることがある。私の知らない世界への扉を一挙に10個も手に入れて1050円というのは安い買物だ。安いからうれしいのではない。一挙に扉が10個も増えることがうれしいのだ。
 もちろん当たり外れはある。これは一種の知的ギャンブルである。しかし、宝くじを買うより百倍お得なギャンブルだと思っている。少なくとも、完全な「はずれ」はない。何がしかのものは残るし、はずれクジはまた換金することすら可能なのだ。なぜ世の中の人は、当たるか当たらないかわからない宝くじに大枚をはたくのか、私には理解できない。多くの場合、お金を出して落胆を買っているのである。
 あなたはどう思うだろう。宝くじを買うのがいいか、100円の本に投資するのがいいか。判断はおまかせする。私なら本を買う、というだけである。先日は、店先のワゴンでCDのたたき売りをしていた。私は気に入ったジャケットのCDを5枚わしずかみにして購入し、手当たり次第に聴いていった。とても惹かれる歌声があったので、調べてみるとケヴィン・レトーの『アナザー・シーズン』というアルバムだった。またまた世界が広がった。

 世の中は予期せぬことで満ちている。英語のことわざにも、The unexpected always happens.(予期せぬことがいつでも起こる)というのがある。私の場合で言えば、まず予期せず生まれて驚いた。
 また、世の中は、盲点に満ちている。
 本書のテーマである「仕事術」に関してもしかり。私は人の気づかないノウハウをいろいろ発見して仕事に生かしている。この本では、そんな盲点をいろいろご紹介していこうと思う。みんなに知らせたらもはや盲点でなくなる、と言う人もいるだろう。でも、私は心配していない。みなさんがこの本を読む頃には、新たに百ほどの盲点を発見して、実践していると思うからだ。
 成功にはコツがある。
 あると思う。
 少なくとも、私は自分が成功したと信じている。それが、次の成功への最大の足がかりとなっている。
 私が二十数年勤めた出版社を辞め、英語本の執筆者となる決心をしたとき、親しい友人からこう諭された。「英語本の執筆だけで生きていくなんて無茶だよ。すでにあらゆる英語本が出尽くしている。これから書店の棚を取ることなんかできっこないよ」。
 親友の制止を振り切って独立して10年経った。この間、80冊近い本を書き、ますますそのペースは上がっている。今では月1冊ペースで刊行し、どの本もしっかり書店の棚を取っている。
 私のモットーは、次のたったの2単語で表すことができる。

   Be original! (人まねはするな)

 インプットする必要はある。しかし、インプットをそのままアウトプットしたのでは盗用になってしまう。インプットした情報をいかに取捨し、熟成させ、味付けをして世に出すか。インプットは速いほどいい。インプットが遅くては世の中に乗り遅れてしまう。
 しかし、あせってアウトプットするのは最悪だ。アウトプットはじっくり練って満を持して行なうのがいい。ただし、タイミングを逃せばすべては無に帰す。気持ちはおっとり、視線は鋭く。これがタイミングを逸しないコツである。
 たくさんのアイディアを仕入れよう。そのうちのいくつかをたわわに実らせよう。これまた、宝くじよりはるかに勝算が高い。なぜ、世の中の人は他人任せの確率論にせっせと投資するのだろうか。私は確率論を味方につけるノウハウを持つ必要があると思う。それこそが成功の鍵だと思う。
 失敗はかまわない。むしろ、たくさん失敗したほうが、成功への方向が絞られる。
 私は20社以上の出版社から本を出している。日増しに友人も増える。このように多くの出版社と良好な関係を続けるコツは、とにかく私自身が速く走ることである。すると、必ず人は付いてくる。笑いながら駆け足で付いてくる。一緒に走るのが楽しいのである。
 私はすばやく彼らにバトンをタッチする。すると、彼らも走りながらバトンをタッチする相手を探す。この場合のバトンとはアイディアのことである。ただし、そのアイディアがオリジナルでないと、誰も付いてはこない。再び言おう。

  Be original! (独創的たれ)

 本書では小手先のノウハウではなく、もっと深いところから、オリジナリティを生み出す仕事術をお伝えしたいと思っている。私は「考えること」は「自由である」ことと同義だと信じている。自由でなければ、決して考えたことにはならない。
 これからの時代、オリジナルのアイディアを生み出せない人は生き残れない。作家はアイディアを売る商売だが、それはサラリーマンも一緒だと思う。私が独立したのは、自分のアイディアにどれだけの値段(ユーザー)がつくかを純粋・個別に検証する手段として、それが最も適していると思ったからである。こればかりは会社にいては難しい。
 思考スピードを速める必要がある。行動は慎重でもいいが、思考スピードは日増しに速めなくてはならない。あなたももっと軽装になって、しばらく私と一緒に走ってほしい。


 (『知的生産のための すごい!仕事術』 はしがき)