作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

日本語で読んだ本を英語で読み比べる (ディスカヴァー本より抜粋)

日本語で読んだ本を英語で読み比べる(訳読の呪縛からのがれる)

 

 私たちはこれまで、英語の学習というと、英文を正しく読むとか、英語を正しく聞き取るとか、とにかく与えられた英語を正確に理解することだと思ってきました。

 しかし、どんなに正しく理解し、日本語に置き換えたとしても、それは翻訳であって元の英語とは異なるものです。いくら上手に訳したとしても、ネイティブピーカーが感じているニュアンスにどれほど近いのか、確かめるすべもありません。

 そこで、次のように発想転換してみてはいかがでしょう。われわれは、日本語で書かれたものは、しみじみと味わうことができます。そして、その日本語を英訳したものを見れば、元の日本語と比べて、どの程度うまく翻訳しているか、ある程度判断できます。少なくとも、英語を日本語に訳したときのような、不安を感じることはありません。

 というわけで、日本語で書かれた本を読み、その英訳と読み比べてみてはいかがでしょう。しみじみ分かる、という意味では自伝のような書物が最適です。私が選んだのは、『No One's Perfect―五体不満足』(乙武洋匡著)と『Totto-chan―窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子著)と『So Can You―だから、あなたも生きぬいて』(大平光代著)の3冊でした。

 では、論より証拠、『だから、あなたも生きぬいて』の最後のほうに出てくる、ガンに冒されたお父さんが著者に言った言葉を、日英対訳で見てみることにしましょう。

「人前で絶対に涙を見せたらあかん。みっちゃんはもう弁護士やから、どんなに自分が辛いときでも、涙は見せたらあかん。頼ってくる人は、もっと辛い思いをしてはるんやから......」

 Promise me you'll never let anyone see you crying. You're a lawyer now, you've got people who depend on you. No matter how hard it gets, you can't let them see you crying. It'll make them feel worse.

 元の日本語と比べると、この英訳では、言葉の順序を大胆に入れ替えたところがあります。しかし、われわれは日本語にしっかり立脚して、この英訳者の仕事ぶりを観察することができるのです。

 あなたも、気に入った日本語の本を読みこみ、英訳と読み比べてみてください。


『今からでも英語ができる人になる英語学習法100選』 ディスカヴァー・トウェンティワン刊

p138~139