作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

ネイティブの子供の詩

 アルコールは成人になってからという法律はあっても、文字を書くのは6歳からという決まりがあるわけではありません。早い子供は3~4歳から文字を覚え始めます。そして、耳から入る大量の単語と文法を自分なりに咀嚼し、詩や作文を書き始める子供がいます。次にお見せするのは『オブザーバー』紙主催のコンクールで入賞した、たった4歳の女の子の
O Moon O Moon という詩の一部です。(SEA in my mind, PUFFIN BOOKS, 1990 所収)

O Moon O Moon I wish   (お月様 お月様)
you were so low  (あなたがうんと低いところにいたらいいのに)
that I could stroke you.  (そしたら、あなたに触れられるもの)
Then we could go to the   (それから一緒に公園に行って遊べるわ)
park and play .(中略)
We could stay up all night.  (私たち、一晩中起きていられるわ)
You could make the light,  (あなたは光をつくることができるでしょ)
because you are the moon.  (だって、あなたは月ですもの)

 

 驚くことに、全編、日本人が最も苦手とする仮定法で書かれています。もうひとつ、ぜひとも見ていただきたいのは、7歳の男の子の次の詩です。Sea Thoughts(海の思い)というタイトルの傑作中の傑作です。

Sloshy sea sparkling in the sun.  (波立つ海が、日に輝く)
Salty sea splashing sand.  (塩辛い海が、砂をはね散らす)
Silver sea scooping shells.  (銀色の海が、貝たちをすくい上げる)
Starry sea smoothing seaweed.  (星のように輝く海が、海草をなでつける)
Sunny sea in my mind.  (僕の心の中の、太陽に輝く海)

 なんて素晴らしい詩なのでしょう。この短い詩の中に、「sで始まる言葉」が実に14個も登場します。特に、sparkling、splashing、scooping、smoothing という動詞の連鎖は見事というほかありません。
 この詩を読む限り、就学期の児童が(子供によっては)すでに1万語という語彙を身に付けているという話を、信じないわけにはいかなくなると思います。7歳の子供がこれだけ鋭い語感を持ち、それを韻を踏んだ素晴らしい詩にまとめる力を持っているというのは、私には鮮烈な驚きでした。

(『ネイティブの小学生なら誰でも知っている英単語10000語チェックブック』 2007年 ダイヤモンド社刊 第2章より)