作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

オバマ的英単語(27)ノーベル平和賞受賞演説から


■■■limit■■■  limitsは「許容できる限界、最大・最小」

それは、人間の不完全性、理性の限界という歴史をありのままに認めることなのです。
it is a recognition of history; the imperfections of man and the limits of reason.

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「ある」と認めないと対処できない

 前項の「ゼロでないnon-」という微妙な話を聞き、「そんなのは言葉のあやだ」と言う人々がいることを見込んで、オバマは説明を怠らない。
 平和は人類に共通の願いだ。また自分は非暴力を信奉する。しかし、「世界に悪は存在する。非暴力でヒットラーの軍を止めることはできなかったし、アルカイダに武器を放棄させることもできない」。
 limitは「許容できる限界、最大・最小」の意だが、もとの意味は「境界線の内側とする」である。境界線があることを認め、その外側の世界とも共存していることを認めるところからしか平和への歩みはないのではないかと、オバマは呼びかけるのである。理性の限界を知ることは、理性では割り切れない世界の存在を認めることに通じる。
 「長い間人々が望みながら、いままで平和を実現できなかったのは、何が欠けていたからなのか?」という問いに対してオバマが出した答えが、歴史に学び、人間の不完全さと論理の限界という現実を直視することだった。


■■■trumpet■■■  trumpetは「自慢げに言いふらす」

けれども、戦争自体はまったく輝かしいものではありません。我々は絶対に、そのように美化してはならないのです。
But war itself is never glorious, and we must never trumpet it as such.

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戦争は人間社会の「必要悪」

 ある条件においては武力行使が認められるとしながら、また、兵士たちの勇気と犠牲をたたえながら、しかし「戦争は例外なく人間に悲劇をもたらす」とオバマは言う。「だから決して美化してはいけない」と。戦争の二面性のとらえ方が非常に慎重である。
 ここではtrumpetを動詞として「美しく言う」意味で使っている。トランペットは、晴れの舞台で高らかに吹き鳴らされる楽器だ。晴れがましく響くイメージがここではぴったりなのだが、「調子に乗るな」という批判的な視線を伴って使われることが多いのも、ドンピシャの選択である。
 オバマの考えでは、不完全で、理性だけでは割り切れない人間の社会で、戦争はいわば「必要悪」である。必要悪をなくすことは人間社会を混乱に陥れるかもしれないが、それが「大手を振って歩く存在」になることだけは決して許されないのである。