作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

オバマ的英単語(26)ノーベル平和賞受賞演説から

●ノーベル平和賞受賞演説
Nobel Peace Prize Acceptance Speech  2009.12.10

■■■just■■■  justは「根拠がある」正しさ

「正当性のある戦争」という概念が登場しました。
The concept of a"just war"emerged.

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意表を突くオープニング

 今回の受賞に対する賛否両論を知りつつ、オバマは本題に入るなり、戦争の歴史について語り始め、「正当性のある戦争」という概念を持ち出した。これには世界中の人々が度肝を抜かれた。ノーベル平和賞の受賞演説で、戦争の正当性を主張するなど前代未聞である。さらに説明してオバマは言った。「その概念は、戦争は一定の条件に合致する場合のみ正当化されるというものだ」と。
 justは副詞としてもよく使われるが、形容詞だと「公正な、正当な」の意で、動詞justify(正当化する)、名詞justice(公正、正義)などにつながる。rightが「道義的に正しい」意味を含むのに対して、justは「正当な根拠がある」正しさである。
 オバマが「アメリカの戦争はrightではないかもしれないが、justなのだ」と言いたかったのかどうかは定かではない。だが、「正しい戦争」という立論が引き起こす反発や驚きは計算のうちだろう。それは、このあとをじっくり聞いてもらうためのスピーチの「戦略」でもあったのではないだろうか。


■■■non-violence■■■  non-violence(非暴力)を、オバマは「無暴力」とはとらえない

私は、非暴力の道義的な力の体現者を自負しています。
I am living testimony to the moral force of non-violence.

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「非暴力」と「無暴力」のはざまで

 オバマは、自分の考えは、ガンジーやキング牧師の唱えた「非暴力」と、相反するものではないことを強調する。彼らに「弱いところ、消極的なところ、軟弱なところは微塵もないことを知っている」と。その上で、「しかし......」と続けるのである。
 But I cannot be guided by their examples alone.
 (しかし、私は彼らの先例だけに従うわけにはいかない)
 英語は物事をはっきり表すのに適した言葉だ。non-といえば有無を言わせずnon-(=無・非・不)なのだ。non-acceptanceは「受取拒否」、non-drinkerは「酒を飲まない人」である。
 それを考えると、オバマはほとんどレトリックぎりぎりの論理を展開したように見える。「非暴力(non-violence)は目指すべきものであるが、それは「無暴力」(武力行使ゼロ)ではないと主張する。しかしこれが逆に、現実的で説得力をもつ論理として、欧米のメディアでは高く評価されたのである。