作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

オバマ的英単語(17)大統領就任演説から

■■■responsibility■■■  responsibilityは、アメリカ再生の必須条件だった

いま求められているのは、新たな責任の時代なのです。
What is required of us now is a new era of responsibility.

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さあ、仕事だ!

 You can change.をはじめ、その言葉の一つ一つでアメリカ国民を熱狂させたオバマだったが、この就任演説ではまったくトーンを変えた。日本のメディアも「抑えた印象」などと評した。それはオバマがこれからの道のりの険しさを誰よりも痛切に知っていたからだ。「もうお祭りは終わり。いまや仕事をする時だ」というわけである。
 その際、オバマは人々にどうしても理解してもらわなければならないことがあった。それが、「新たな責任の時代」(a new era of responsibility)である。自分も含めて、国民の一人一人に、アメリカの精神を思い出し、するべき仕事をしてこの難関を越えていく責任がある。それは、ケネディが就任演説で「国が何をしてくれるかよりも、国のために何ができるかを問うてほしい」と言ったのとオーバーラップする。
 はたして人々は、いまもこのオバマの言葉を覚えているだろうか。


■■■price■■■  priceは身近な日常にある「商品の値段」

これが市民権をもった市民であることの代償であり約束なのです。
This is the price and the promise of citizenship.

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自由や平等にかかる代償

 「市民権をもった市民」とは、民主主義のもと自由で平等であり、公正な機会を与えられ、幸せを追求する権利をもっている人々だと言っていいだろう。そして前項の「責任」を認識し、喜んで引き受けることが、そのための値段(代償)なのだとオバマは言う。
 priceは比喩的に「代償」の意味で使われることがある。同じような使われ方をする単語にはほかにcostがある。けれども元の意味を考えると、priceは「商品の値段」、costは「つくるための費用」。
 オバマはここで、より等価交換的で即物的なpriceを使った。代金を渡さなければ物は買えない。でも渡せば誰にでも買える。そのシンプルさと平等性がぴったりきたのではないだろうか。


■■■mark■■■  markは「ほかと違うことを示す」

この日を心に刻もう。われわれは何者なのか、どれだけの旅路を歩んできたかを思いながら。
So let us mark this day with remembrance of who we are and how far we have traveled.

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歴史の道のりに印を残す日

 markはここでは「心に刻む」と訳していいだろう。柱などにナイフで印をつけるイメージがどこか似ている。長い道のりを、幾多の苦難を乗り越えて歩いてきたそのところどころに、おそらくは印が残されているはずだ。「この日」もその一つになる、いや「しよう」と言うのである。
 markには「祝う」という訳をあてる場合もある。1日1日を「心に刻みこむ」ことが、その日を祝うことなのかもしれない。
 markの語源は古英語にあり、元は「境界」(他と違うことを示して区別する印)を意味する。この日は、新しいアメリカをスタートさせる「境界線」だったとも言える。
 このスピーチでオバマは国民に、責務と忍耐を引き受けるよう説いた。それも進んで引き受けるようにと。「我々が試されたとき、決してくじけなかった」とのちの人々に言われるために。