作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

オバマ的英単語(15)大統領就任演説から


■■■all■■■  allは「全部漏れなく、ひっくるめて」

このすべて、私たちはできるのです。これをすべて、私たちはやるのです。
All this we can do.  All this we will do.

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聞き手の心理を読むオバマのレトリック

 通常の語順なら、We can do all (of these).  We will do all (of these).となるところ。allのもつ絶対性、完全性を利用して、「すべて、一つの漏れもなく」やるという自信と、強固な意志を表すことに成功している。しかも、あれこれの仕事を全部まとめてthisと単数形でとらえている。we can do と we will do の対比も見事である。
 しかし、立ちふさがる課題はいくつもある。ここで言及されているだけでも、「国内経済の回復と雇用の創出、医療の質の向上とコスト削減、自然エネルギーの利用、教育環境の再構築」と、まさに目白押しである。それらをすべてクリアすることなど、ふつうに考えればとうてい不可能だ。
 しかし、だからこそ、この表現なのだ。「本当にできるだろうか......」と人々が疑念をいだくことを予想し、あえて強い表現を使っている。聞き手の心理を読むオバマならではの考え抜かれたレトリックと言えるだろう。


■■■work■■■  workは「正常に、むだなく機能している」

いま問題にすべきは、政府が大きいか小さいかではありません。政府が機能しているどうかなのです。
The question we ask today is not whether our government is too big or too small, but whether it works.

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政府は本来の力を発揮しているか

 日本のメディアでも取り上げられることが多かったので、覚えている方も多いだろう。「リベラルか保守かではない」(2004年民主党大会)、「赤い州か青い州かでもない」(勝利宣言)と語ってきたオバマは、ここで「政府が大きいか小さいかが問題なのではなく、機能しているかどうかが問題なのだ」と宣言する。まさに、国を再生するために役立たなかった種々の議論の無意味さを喝破した、力のこもったひと言である。
 ここで使われているworkという動詞は、機械が正常に作動している様子や、薬が的確に効いていることなどを表す。The alarm didn't work. といえば、「警報機は作動しなかった」ということ。つまり、期待される機能を発揮しなかったということだ。
 政治の世界においては、人もまた期待された機能を果たさなくてはならないのだ。