作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

オバマ的英単語(14)大統領就任演説から


■■■pass■■■  passは「関係の近い者に手渡す」


その気高い思想は世代から世代へと引き継がれてきました。
That noble idea passed on from generation to generation.

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理想というバトンを次世代へ手渡す

 passは、バスケットなどでボールを「パス」するように、近い関係の者へと手渡すイメージがある。反対語がstopだと聞けば、「途絶えずに引き継いでいく」イメージがさらにはっきりするだろう。
 noble idea(気高い思想)は、前に出てきたideal(理想)とほぼ同じ意味で、その中身は、このあとに続く言葉によると(少し長くなるが)、「すべての者は平等であり、自由であり、あらゆる手段で幸福を求める機会を与えられているという、神から与えられた約束」のことだという。
 移民の子であったオバマは、大統領まで登り詰める過程で、建国者たちの理想がいまもちゃんと生きていることを身をもって体験した。それは不況にあえぐアメリカ人が見失っていたものでもあった。だから、建国者たちから綿々と引き継がれてきた理想を、しっかり引き継ぎ、次世代に手渡さなければならないとオバマは強調するのだ。


■■■carry■■■  carryは「重さを支えながら運ぶ」

無名の彼らが、長く険しい道を経て、繁栄と自由へわれわれを導いてくれたのです。
They who are obscure have carried us up the long rugged path towards prosperity and freedom.

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国を担ってきたのは無名の人々だった

 carryには「運ぶ」とともに、荷物の重さを支えるという意味がある。
 「私たち」は人なので、ふつうならcarryでなくtake (us) to「連れていく」を使うところ。carryではまるで荷物のようである。しかし、take (us) toでは、運ぶ人々が担う「重さ」が抜け落ちてしまう。carryを使うことで、「名もない人々が、ゴトゴトとでこぼこ道を荷馬車で運んでいく」イメージがプラスされるのである。目立つところではないが、こういうところにも、オバマの地に足の着いた言語感覚が光っている。
 ちなみに、ここでは短くまとめるためにtheyで表したが、原文はmen and womenである。建国者の時代を語るときにもmenのみとしないところに、新しい時代の指導者たる細心の配慮を感じる。