作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

オバマ的英単語(10)勝利宣言から


■■■remake■■■ もともとなかったものはremakeできない

この国を再生させるという仕事にどうか参加してください。
I will ask you join in the work of remaking this nation.

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オバマが「re-」のつく言葉を好むわけ

 remakeは「作り直す」。映画の世界では、以前につくられた作品の再映画化をリメイクという。
 オバマの演説には、「re-」という接頭辞をもつ単語がよく登場する。この演説の中だけでも、renew this nation's promise(この国の約束を再生させる)、restore prosperity(繁栄を取り戻す)、reclaim the American dream(アメリカの夢を取り戻す)と、次から次と繰り出される。どれにも「再び、あらためて」という意味が込められている。
 「本来アメリカが持っていたけれど、一時的に失われたものがたくさんある」とオバマは言うのだ。繰り返される「re-」が、あたかもボディブローのように効いてくる。「もとは持っていた」と言われて、アメリカ国民は、「ほんとうは良い国だったのだ」と自国を再評価することができた。
 オバマの言葉の魔術は、細部にも怠りがない。


■■■voice■■■ voiceには、人々の「よそゆきでない思い」が込めれる

私にはあなた方の声も聞こえています。あなた方の助けが必要です。そして私はあなた方の大統領にもなるつもりです。
I hear your voices, I need your help, and I will be your President too.

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「声なき声」に耳を傾ける

 これは、大統領選でオバマに投票しなかった人々に向けた言葉だ。voiceは、実際の音としての「声」ではなく「意見」の意味で使われている。
 「意見」にはopinionという語もあるが、こちらは「論理的に考えた末にきちんと出した結論」というニュアンス。公の場で発言することのない人々の声なき声や、ちょっとした感想のようなものを表すには、voiceの方がはるかにぴったりくる。そしてオバマは、日々のつぶやき、陰でささやかれる不満、十分な教育を受けられなかった人々のよそゆきでない日常のvoiceにこそ、聞くべきものがあると言う。
 2009年にプラハで行われた「核廃絶演説」でも、オバマはvoiceを使って、平和を求める人々の心からの願いを次のように語った。
 Those are the voices that still echo through the streets of Prague.
 (それはいまもプラハの街に響いている人々の声です)