作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

オバマ的英単語(6)民主党大会基調演説から

■■■there's■■■ there'sをたたみかけて、人々の心を鷲づかみにする

リベラルなアメリカも、保守的なアメリカもありません。ここにあるのは、アメリカ合衆国ただ一つなのです。
There's not a liberal America and a conservative America; there's the United States of America.

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やがて歓喜の叫びが渦巻いた!

 この演説の中で最も有名になったパッセージである。オバマはthere'sを繰り返して「黒人のアメリカも白人のアメリカもラテン系もアジア系もない」とたたみかけ、最後はthere's the United States of Americaととどめを刺す。会場のボルテージはオバマのひと言ごとに上がり、やがて歓喜の叫びと拍手が渦巻いた。
 オバマはさらに続ける。「共和党の赤い州も、民主党の青い州も変わらない」、「イラク戦争に反対した人も、支持した人も、ともに愛国者であることには変わりないのだ」と。そして再びoneを使って、We are one people.とくくってみせる。
 there isはごく平凡な、どこでも使う表現である。そうした日常的な表現を使って聴衆を熱狂させるオバマの言語感覚は、やはりただものではない。


■■■hope■■■ audacity of hopeはオバマのキーワード

困難に直面した時の希望。不安の中にいる時の希望。大胆に希望するのです。
Hope in the face of difficulty. Hope in the face of uncertainty. The audacity of hope!

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希望は大胆にかかげるもの

 the audacity of hope という言葉に注目しよう。audacityはあまり耳慣れない単語だが、「大胆さ」の意。the audacity of hopeはオバマの著書のタイトルにもなっている(邦訳は『合衆国再生―大いなる希望を抱いて』ダイヤモンド社)。
 このフレーズのもとは1990年にジェレミア・ライト牧師が行った説教「audacity to hope」である。ライトはオバマが通っていた教会の牧師で、その過激な説教が取り沙汰され、大統領選の渦中にあったオバマを危機的状況に陥れた人物だ。しかし、「audacity to hope」でライトは、どんなに困難な状況にあっても、少し目線を変え神との関係を考えれば、希望を持ち続けることができると説いた。
 オバマはこの演説の中で、ジョン・ケリーの信条をa politics of hope(希望の政治)と名づける。それは、そのままオバマ自身の政治信念へとつながっていくのである。


■■■bedrock■■■ bedrockは「揺らがない基盤」

それがこの国を支える基盤となっているのです。この先にもっといい日が待っていると信じられることが。
That is the bedrock of this nation, a belief that there are better days ahead.

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イメージ語の力を利用する

 bedrockは初めて聞いた単語だという人が多いかもしれないが、bed(ベッド)とrock(岩)の組み合わせなのでなんとなく意味はわかるだろう。そう、「最下層の岩盤」のことで、転じて「基礎、基盤」の意味になっている。ただし、foundationやbasisを使う場合よりも、その基盤が強固で揺るがないことを表すことができる。また、foundationやbasisよりもはるかに具体的なイメージを伴う語である。
 a belief that there are better daysが、前項でいう「希望」の具体的なかたちである。そしてそれこそが、アメリカ人に神が与え給うた最高の賜物であるとオバマは宣言する。
 この演説の末尾でオバマは、ジョン・ケリーが大統領になれば、「この長い政治的暗黒を抜けて、もっと明るい日が訪れるだろう」と締めくくっている。ここにも「明るい明日への希望」が繰り返し述べられている。