作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

英語受動態の10レベル(第5回 9・10レベル)

■〈不可抗力レベル9〉の受動表現

典型例:Traffic is paralyzed by the typhoon.
意味:台風で交通がまひさせられている。
   →台風で交通がまひしている。

 最後の2つのレベルは、「不可抗力」の名にふさわしい。
 paralyzeは「まひさせる」と言う他動詞。台風のために、やむなく交通がまひしているわけだから、やはり受動態で表す。「嵐によって損害を受ける」「船が風でひっくり返る」などの被害状況も同様だ。

【類例】
(1) The railroad lines are often damaged by typhoon.
  (鉄道はしばしば台風によって損害を受ける)
(2) The ship was wrecked in the storm.
  (その船は嵐で遭難した)
(3) The boat was upset by the wind.
  (その船は風でひっくり返った)
(4) The village was completely destroyed by the landslide.
  (その村は山くずれで全滅した)
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(5) School was closed for four days.
   (4日間休校になった)
(6) The baseball game was called off because of snow.
  (雪のために野球の試合は中止になった)
(7) Our picnic was spoiled by the rain.
  (ぼくらのピクニックは雨で台なしになった)


■〈不可抗力レベル10〉の受動表現

典型例:He was seriously injured in the accident.
意味:彼はその事故で大けがをさせられた。
   →彼はその事故で大けがをした。

 いよいよ「不可抗力レベル」最強である。ここでは、けがをする、戦死する、おぼれ死ぬなど、最悪のケースがひしめいている。
 ふつう、けがは不可抗力でやむなくするものだ。けがが大好きという人はいまい。そこで、英語では「けがをさせられる」と、受動態で表現することになる。同様に、「雨にあう」「デッドボールを食らう」など、不本意な目にあう場合に、やはり受動態を使う。その行き着く先は、命を落とすケースが最悪だが、類例のおまけに幽霊にも登場してもらうことにした。ご覧ください!

【類例】
(1) He was hurt in a car accident.
  (彼は自動車事故でけがをした)
(2) She was caught in the rain on the way.
  (彼女は途中で雨にあった)
(3) He was hit by pitch.
  (彼はデッドボールをくらった)
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(4) He was killed in the World War Ⅱ.
  (彼は第2次世界大戦で戦死した)
(5) The child was drowned.
  (その子どもはおぼれ死んだ)
(6) That park is haunted.
  (あの公園は幽霊が出る)

 これで、日本語の受け身とは一味も二味も違う「受動態」の実態調査は終了です。
 文法を学ぶ時には、「受動態」は「能動態」をひっくり返した形として習います。しかし、こうしてたくさんの「受動態」の文例を見てくると、「受動態」は「能動態」の付属物あるいは派生物などではなく、「受動態」プロパーの豊かな表現世界があることがわかる。
 調査に当たった私自身、正直言って「受動態」の持つパワーを改めて見直した。
 この章の始めに、日本語の「受け身」には、どこか「被害者感情」のようなものが含まれていると書いた。しかし、英語の「受動態」には、そんな後ろめたい感情とは無縁の表現がたくさんある。
 たとえば、「受賞する」「資格がある」「婚約する」などがそれだ。「ビルが完成する」「トンネルが開通する」「店が開店する」なども同様である。これらは、どれもプラス・イメージを持った表現ばかりである。
 そもそも、I am interested in this book.(この本に興味がある)という文を口にする時、ネイティブ・スピーカーにはこれがもともと受動態の表現であることすら意識に上らないと思う。かく言う私も、受験勉強の中で、たとえば be absorbed in ~などのイディオムを、もはや受動態という意識なしに丸暗記した覚えがある。
 では、ここらで「受動態ショールーム」を店じまいすることにしよう。