作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

英語受動態の10レベル(第1回 1・2レベル)

 英語の多様な受動態表現を読み解くキーワードがある。それは「不可抗力」という言葉だ。日本語の「被害」とはニュアンスが違う。人力をもってしては抗すべくもない事柄を「不可抗力」という。それを被害と取るのは、それこそ被害妄想なのだ。物事は起こるべくして起こるのである。
 英語の「不可抗力」の表現には、感情、体調、状態、災害など、いろいろなケースが考えられる。ここでは、「不可抗力のレベル」というのを想定して、レベルの低いケース(「安心する」など)から、レベルの高いケース(「戦死する」など)へと10レベルに分けて見ていくことにしたい。なぜ「受動態」を使うのかに意識を集中して読んでいただきたい。


■〈不可抗力レベル1〉の受動表現

典型例:I was relieved at the news.
意味:私はその知らせを聞いて安心させられた。
   →私はその知らせを聞いて安心した。

 「安心する」という場合、何の原因もなく安心するわけにはいかないので、「何かによって安心させられる」と、受動態で表現される。relieveは「安心させる」という他動詞である。
 この表現は、「被害者感情」とはまったく無関係である。しかし、何の理由もなく安心することはできないので、何らかの不可抗力が働いたと考える。これを不可抗力と呼ぶのは抵抗があるかもしれないが、私は人間の力を超えた現象や作用のことを、ここで不可抗力と呼んでいるのである。〈不可抗力レベル1〉では、被害どころか、いいことずくめなのを類例でお確かめいただきたい。同じ感情を表す場合でも、「がっかりする」などのマイナスの感情の場合は〈不可抗力レベル8〉に設定した。要するに、うれしいも悲しいも、不可抗力のなせる業なのである。

【類例】
(1) I was deeply impressed by his speech.
  (私は彼の演説に深い感銘を受けた)
(2) I was deeply moved by the cheers of my friends.
  (私は友達の声援にとても感動した)
(3) I am pleased with the new dictionary.
  (私は新しい辞書に満足している)
(4) She is very interested in chemistry.
  (彼女は化学に大変興味を持っている)
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(5) My boss is easily excited.
  (私の上司は興奮しやすい)
(6) She was absorbed in listening to a CD.
  (彼女はCDを聞くのに熱中していた)
(7) He was lost in thought.
  (彼は考えにふけっていた)


■〈不可抗力レベル2〉の受動表現

典型例:The building was completed last week.
意味:そのビルは先週完成させられた。
   →そのビルは先週完成した。

 ビルが建設されていることに気づかなかったとすると、ある日ビルが建っていたことになる。このような新しいビルの出現を、英語では受動態で表したりする。とても「不可抗力」とは言いがたいので、〈不可抗力レベル2〉に設定した。
 誰かがやってくれたことを表すので、被害どころか恩恵に浴する場合も多い。類例の後半の「火事が消える」「事件が収まる」などがそのよい例である。

【類例】
(1) A high building was build in front of my house.
  (私の家の前に高いビルが建った)
(2) This tunnel was opened last year.
  (このトンネルは去年開通した)
(3) The bookstore was newly opened in front of the library.
  (図書館の前に新しく本屋が開店した)
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(4) The fire was soon put out.
  (火事はまもなく消えた)
(5) The matter was settled.
  (その事件は収まった)
(6) Is my bicycle repaired [fixed]?
  (私の自転車は直りましたか)