作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

【ミニコラム⑰】 研究しすぎ

 無名のユダヤ人が語ったという名句に、こういうのがあります。
「学者は、考える時間がなくなるほど研究してはならない」
 世の中には、単なる文献集めや翻訳を「研究」と取り違えている学者がたくさんいます。
 私が大学の哲学科にいたころ、ある教授が翻訳書を刊行したので、内容について尋ねると、こういう答えが返ってきました。
「まだね、翻訳しただけだから、内容はわからないの」
 そんなものかと呆れましたが、その正直さには一種の感動を覚えました。確かに、翻訳者がそのまま研究者になれるとは限りません。
 教育に関するユダヤの教えには、こういう言葉もあります。
「子供たちに自分が知っていることだけを教えてはならない。なぜなら、彼らは違う時代に生まれたのだから」
 最近のように科学技術の進歩のスピードが速まると、親が学んだ知識のおおかたは時代遅れになっている可能性があります。情報処理の学校で高齢の教師から学んだ生徒が、実社会に出たら使い物にならなかったという、悲しいエピソードもよく耳にします。