作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

【ミニコラム⑤】 速いことはいいことか

 私が経済雑誌のデスクをしていた時のこと。原稿5枚分のスペースが空いてしまい困っていたところ、ある執筆者が、「10分間待ってくれれば書きますよ」と言って、目にも止まらぬ速さで原稿を書いてくれました。部員一堂、あまりの早業に大感激したのですが・・・。あとで編集する段階になって、結局その原稿はボツになってしまいました。落ち着いて見てみると、読むに耐えない内容だったからです。
 速く書くのがいいか、時間はかかっても使える原稿を書くのがいいか。それは、使える原稿を書くほうがいいに決まっています。
 アメリカのジャーナリスト、A・J・リーブリングが、こんなことを言っています。「私は、私より速く書ける誰よりも上手に書くことができるし、私より上手に書ける誰よりも速く書くことができる」。さすが敏腕ジャーナリストだけあって、うまいことを言うものです。この人なら、どんな状況でもそこそこの原稿は期待できそうです。
 こんな名言を吐いた人もいます。「人は、どんなに早く仕事をしたかは忘れてしまうが、どんなに良い仕事をしたかは覚えていてくれるものだ」
 最近、世の中の変化の速度が増した分、時間をかけてでもいい物を作る、という仕事の基本をおろそかにしている人が増えているような気がします。