作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

英文法のつかまえ方

『英文法練習帳』は、準備に7年間をかけた
私の新しい代表作です。
序文より「英文法のつかまえ方」という一文を
抜粋してご覧いただきましょう。

■万有引力とチューインガム
 高校生の時、物理の教科書に失望したことがあります。「万物には引力が働いている」という万有引力の説明を読んだ時です。「なぜ万物には引力が働くのだろう?」という強烈な疑問がわき、その答えを探しましたが、教科書にはそれについてはひとことも書いてありませんでした。
 そんな私にとって、英文法も謎の多い科目でした。
 英文法の参考書を開けると、まず最初に「補語」と「目的語」という言葉が出てきますが、これがわかりにくい。「不定詞」、「分詞」という言葉に至っては、説明すらない。「不定詞って、何が不定なのだろう。分詞って何が分かれているのだろう」と謎は深まるばかりです
 「不定詞」については本書の85ページを、「分詞」については81ページをご覧ください。ここでは、「補語」と「目的語」について、ちょっとレクチャーしておきましょう。

■補語って何だろう?
 まず補語から。
 文法書には、《補語は、主語や目的語の意味を補うので「補語」という》と書かれています。具体的な例でお話ししましょう。私の好きな英語の名句に、
 TV is chewing gum for the eyes.
 (テレビは目のチューインガムだ)
というのがあります。アメリカの有名な建築家、フランク・ロイド・ライト(帝国ホテルの設計で有名)が半世紀以上も前に言った言葉です。うまいことを言うものですよね。
 この文で補語は、〈chewing gum for the eyes〉の部分です。では、文法書の言うように、この「目のチューインガム」という句は単に主語の意味を補っているだけでしょうか。私には到底そうは思 えません。ライトは誰も思いつかない句をひらめいてこの文を作ったのであり、〈chewing gum for the eyes〉はこの文の眼目です。
 「最近発明されたテレビってね、ありゃ言ってみれば、目のチューインガムさ!」とライトさんが楽しげに語っている様子が見えるような気がしませんか。ならば、「ラジオは耳のチューインガム」ということになるでしょうか。
 私は、補語は主語や目的語の意味を補うどころか、それがないと文が体裁を保てない眼目の部分のような気がしてなりません。ですので、同じ「ホゴ」という響きを使うなら、「保語」と書きたいくらいです。「その言葉がないと文の体裁を保てない言葉」という意味ですね。
 今度は主語が複数形の文で試してみましょう。
 Friends are □.
 □の所が「補語」ですね。友達は何だというのでしょう。これに対する答えのひとつとして、こんなユーモラスな英語のことわざがあります。
 Friends are thieves of time.
 「友達は時間の泥棒である」というのですね。皆さんも経験ありませんか。勉強しようと思うと「ねえ、遊ばない?」と誘ってくる友達。このことわざでも、□の部分、つまり補語が眼目になっています。単に主語を補うというのとは、雲泥の差です。

■「目的語」は「結果語」を兼ねている?
 わかりにくい文法用語の2つ目は目的語です。
 「目的」に対する言葉は「結果」です。「目的語」に対して「結果語」というのもあるのかな、と思って文法書をめくっても最後まで出てきません。では、目 的語って、いったい何なのでしょう。私は現実主義者なので、ある時、目的語の種類を数えてみたことがあります。ざっと数えただけでも少なくとも8種類はあ りました。私の調査結果をご覧ください。

1. Jack ate two hamburgers.〔行為の対象〕
  (ジャックはハンバーガーを2つ食べた)
2. Jack loves Mary.〔感情の対象〕
  (ジャックはメアリーを愛している)
3. Jack visited Yokohama.〔行為の目的地〕
  (ジャックは横浜を訪れた)
4. Jack watered the lawn.〔行為の影響〕
  (ジャックは芝生に水をまいた)
5. Jack dug a hole in the ground.〔行為の結果〕
  (ジャックは地面に穴を掘った)
6. Jack is playing the piano.〔行為の道具〕
  (ジャックはピアノを弾いた)
7. Jack prides himself on his singing.〔再帰目的語〕
  (ジャックは歌が自慢だ)
8. Jack lived a good life.〔同属目的語〕
  (ジャックはよい一生を送った)

 この調査の結果、「目的語」は実は「結果語」も兼ねるという、驚くべき事実が判明しました(5の文を参照)。穴は掘った結果できるものだからです。
 目的語は英語の"object"という言葉の訳語です。objectには「対象」という意味もあるので、私は「対象語」のほうがまだしも実情に合った訳なのではないか、とひそかに思っています(1と2の文を参照)。
 いかがでしょうか。文法書の最初のページに出てくる用語が、こんなに"突っ込みどころ満載"では、先が思いやられますよね。

■本書は英文法の「練習帳」
 この本のタイトルには「練習帳」という言葉が使われています。練習帳というと、子供の頃の計算練習を思い出す人もおられると思います。実は、私の思いも 同じです。あたかも計算練習のような"体を使ったトレーニング"を通して、モヤモヤの多い英文法をスッキリさせよう、というのがこの本の狙いなのです。つ まり、ひとことで言うと、この本で目指しているのは、《英文法を算数のように学ぶ!》ことなのです。      (以下略)