作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

名言の森 心に響く千人千句 (東京堂出版)

■ はじめに ■ 

千人千句の光と影 (抜粋)


 われわれはいつかは人生に別れを告げなくてはならない運命にあるが、この世に生きた証として言葉を残すことだけはできる。その言葉が別の人の人生を豊かにし、導きの光となる場合もあるだろう。
 古今東西の千人を選び、「この人にしてこの句あり」という名言を一人一句ずつ、合計千句集めて、テーマ別に整理してみた。いまこの本を編み終え、あらためて忘れがたく思う言葉のいくつかをご紹介しよう。

「この世に生を受けたこと、それが最大のチャンスではないか」(アイルトン・セナ)
「私は、世界中に愛の手紙を書き送る神の手に握られた、小さな鉛筆です」(マザー・テレサ)
「雪は天から送られた手紙である」(中谷宇吉郎)
「われわれの真の国籍は人類である」(H・G・ウェルズ)

 一芸に秀でた人々の一世一代の名ぜりふも、忘れがたい味がある。

「一編の詩は流星である」(ウォレス・スティーブンズ)
「リンゴひとつで、パリをあっと言わせてやる」(ポール・セザンヌ)
「練習はしません。常に演奏です」(ワンダ・ランドフスカ)
「ホールインワンは、狙ってできるものではない。しかし、狙わなければ決してできない」(アーノルド・パーマー)

 中でも忘れられないのは、イタリアの薄幸の画家モディリアーニが、妻でありモデルでもあったジャンヌに残した次の痛切な一句である。

「天国までついてきてくれないか。そうすれば、あの世でも最高のモデルをもつことができる」

 ジャンヌはモディリアーニの二人目の子を宿していたにもかかわらず、彼の死の二日後にアパートの6階から飛び降り自殺し、夫のあとを追ったという。

 どんなに悲しい言葉も辛い言葉も、時を越えて生き残る。そんな言葉の強さ、しなやかさを、この千句集で味わっていただければ、大変うれしい。
(中略)
 この本を編む仕事は、私が半世紀の間に読んできた書物を読み返す作業とパラレルであった。震災直後の計画停電の合間に執筆を進めた本書は、私にとって忘れがたい本となった。この本を書くことが、当時の私の心の拠り所でもあった。