作家・英語教育研究家 晴山陽一オフィシャルサイト

英語のことわざで覚える英会話100(PHP研究所)

■ はじめに ■  (抜粋)

 

 
        最初に忘れられないエピソードを1つ。ハンガリー独立の英雄、コシュート・ラヨシュ(1802-94)が英語をマスターした驚くべき方法の話です。
 彼は、監獄の中で、たった1枚の紙に書かれた英文を繰り返し読むことにより、英文法をあらかた身につけることができた、というのです。
 彼はこう書いています。

「私は英語の文法を、文字通り発明しなければなりませんでした。シェークスピアの16行詩の中の言葉のあらゆる可能性を100万回繰り返し理解しました。すると、私の英語の知識は、あとは語彙を増やせばよいだけになっていたのです」

 これは、驚くべき言葉です。
 たった16行の文章を100万回読み込むことにより、英文法をおおかたマスターできた、というのですから。

 いまは、英語の参考書や教材が山のようにあふれています。
 私たちは次々に出版される書物に目を奪われ、1冊の本を読み終えることもなかなかできません。
 英語にも、そんなことわざがあります。

 He who begins many things, finishes but few.
 (たくさんのことを始める人は、ほんの少ししかやり遂げられない)

 しかし、ラヨシュはたった1枚の紙切れに書かれた英文だけで、英語を深く学ぶことができたのです。
 私はいま、英語のことわざの本をあなたにプレゼントしたいと思っています。
 なぜなら、ことわざには英語のエッセンスがぎゅっと詰まっているからです。
 たった1つのことわざからも、実にいろいろなことを学ぶことができます。
 実例をあげましょう。

 It is never too late to learn.
 (学ぶのに遅すぎることはない)

 このことわざを、穴があくほど眺めてください。
 この数単語のことわざの中に、英語の重要な知識がたくさん詰め込まれていることがわかってくると思います。
 ちょっと列挙してみましょうか。

(1) to learnは「to不定詞(の名詞用法)」
(2) この文は「It ... to 構文」
(3) 「too ... to ~」は「~するのに・・・すぎることはない」という重要表現
(4) neverは「絶対にない」と〈頻度ゼロ〉を表す副詞

 これだけではありません。
 このわずか7単語の短い文から、「英語は頭から語順通りに読むべきだ」という英文理解の極意も学ぶことができます。
 こんな感じです。

  It is never(そういうことは絶対にない)
  too late(遅すぎることは)
  to learn(学ぶのに).

 また、このことわざを覚えていると、いろいろなときに応用することができます。
 次のように。

 It is never too late to learn a new language.
 (新しい言語を学ぶのに遅すぎることはない)
 It is never too late to change your bad habit.
 (悪習を直すのに遅すぎることはない)
 It is never too late to show your gratitude.
 (感謝の気持ちを伝えるのに遅すぎることはない)

 いかがですか。
 たった1つのことわざから、これだけのことが学べるのです。
 この例から、ラヨシュが16行詩を100万回読むことで英文法を身につけたという話の信憑性を、少しは信じる気になれたのではないでしょうか。
 この本は、100個のとっておきのことわざを通して、あなたを英語の達人にすることを目指しています。
 どうか気楽に100編のエッセイを読んでください。早くも1編目で(たぶん)あなたは英語の魅力のとりこになっていることでしょう。
 本書で私は、たった1文からでも多くの利益を得られる「デリバティブ英語学習法」をあなたに伝授したいと思います。
 リスクなしの「ことわざ運用法」で、どうか莫大な知的財産を手に入れてください!
 以上、英語をマスターするために、わざわざ監獄に入る必要はない、という耳寄りなお話でした。